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Page:Gunshoruiju18.djvu/379

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なでしま竹生嶋などいふ所々扶のみえたるいとおもしろし。せたのはしみなくづれてわたりわづらふ。あはづにとどまりて。しはすの二日京にいる。くらくいきつくべしと。さるの時ばかりに立てゆけば。關ちかく成て。山づらにかりそめなるきりかけといふものしたるかみより。丈六のほとけのいままであらづくりにおはするが。かほばかりみやられたり。あはれに人はなれて。いづこともなくておはする佛かなと打見やりてすぎぬ。こゝらの國々を過ぬるに駿河の淸見が關と相坂のせきとばかりはなかりけり。いとくらく成て。三條の宮の西なる所につきぬ。ひろとあれたる所の過ぎつる山々に[しイナシ]もおとらず。おほきにおそろしげなるみ山木どものやうにて。[以下一本三七八頁下段三行ニツヾク](底本三六九頁上段一五行)はゝなくなりにしめ[以下一本三七一頁下段八行ヨリツヾク]ひどもも。むまれしよりひとつにて。よるはひだり右にふしおきするも哀に思ひ出られなどして。心もそらにながめくらさる。たちぎきかいまむ人のけはひして。いといみじくものつゝまし。十日計有てまかでたれば。てゝはゝすびつに火などおこしてまちゐたりけり。くるまよりおりたるを打みておはする時こそひとめもみえさぶらひなども有けれ。この日ごろは人ごゑもせず。まへに人かげもみえず。いと心ぼそくわびしかりつる。かうてのみも。まろが身をばいかゞせむとかするとうちなくを見るもいとかなし。つとめても。けふはかくておはすれば。うちと人おほく。こよなくにぎは[ゝイナシ]しくも成たる哉とうちいひてむかひゐたるもいと哀に。なにのにほひの有にかと淚ぐましうきこゆ。ひじりなどすらさきの世のこと夢にみるはいとかたかなるを。いとかうあとはかないやうにはかしからぬ心ちに夢に見るやう。きよ水のらい堂にゐたれ