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Page:Gunshoruiju18.djvu/375

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へし奉るべきにもあらず。たけしばのをのこに。いけらん世のかぎり。武藏の國をあづけとらせて。おほやけごともなさせじ。たゞ宮にその國をあづけ奉らせ給ふよしの宣旨下りにければ。此家を內裡のごとくつくりてすませ奉りける家を。宮などうせ玉ひにければ。寺になしたるをたけしば寺といふなり。その宮のうみ給へるこどもは。やがてむさしといふ姓をえてなん有ける。それより後。火たきやに女はゐるなりとかたる。野山あしをぎのなかをわくるよりほかの事なくて。武藏と相摸との中に[ゐイ]てあすだ川といふ。在五中將の。いざこととはむと。よみけるわたり也。中將の集にはすみだ川とあり。舟にてわたりぬれば相摸の國になりぬ。にしとみといふ所の山。ゑよくかきたらん屛風をたてならべたらんやうなり。かたつかたは。海はまのさまも。よせかへる波のけしきも。いみじうおもしろし。もろこしがはらといふ所も。すなごのいみじうしろきを二三日ゆく。夏はやまとなでしこのこくうすく。にしきをひけるやうになん咲たる。これは秋の末なれば。見えぬといふになを所々は打こぼれつゝ。あはれげに咲わたれり。もろこしがはら[にイ]。やまとなでしこしも咲けんこそなど。人々おかしがる。あしがら山といふは。四五日かねて。おそろしげにくらがりわたれり。やういりたつ。ふもとのほどに。空のけしきはかしくも見えず。えもいはずしげりわたりて。いとおそろしげなり。麓にやどりたる[所イナシ]に。月もなく。くらき夜のやみに。まどふやう成に。あそび三人いづくよりともなく出來たり。五十ばかりなるひとり。二十ばかり成。十四五なると有。いほのまへに。からかさをさゝせてすへたり。をのこども火をともし