Page:Gunshoruiju18.djvu/374

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おのこのかく獨ごつをいとあはれに。いかなるひさごのいかになびくらんと。いみじうゆかしくおぼされければ。みすをしあげて。あのをのこ。こちよれとめしければ。かしこまりてかふらんのつらにまいりたりければ。いひつること今ひとかへり我にいひてきかせよとおほせければ。さかつぼの事をいまひとかへり申ければ。我ゐていきてみせよ。さいふやうありとおほせられければ。かしこくおそろしと扶思ひけれど。さるべきにや有けむ。おひ奉りてくだるに。[ろイ]んなく人をひてくらんとおもひて。その夜せたのはしのもとに此宮をすへたてまつり。せたのはしをひとまばかりこぼちて。それをとびこして。このみやをかきおひ奉りて。七日七夜といふに。むさしの國にいきつきけり。みかどきさき。みこうせ玉ひぬとおぼしまどひもとめ給に。武藏の國のゑじのをのこなん。いとこうばしきものをくびにひきかけて。とぶやうに迯けると申いでてこのをのこをたづぬるになかりけり。ろんなくもとの國にこそ行らめと。おほやけよりつかひくだりてをふに。せたのはしのこぼれてえゆきやらず。三月といふにむさしの國にいきつきて。このをのこをたづぬるに。此みこおほやけ[のイ]つかひをめして。われさるべきにや有けん。このをのこの家ゆかしくて。ゐてゆけといひしかば。ゐて來たり。いみじくこゝありよくおぼゆ。此をのこつみし[れイ]うせられば。我はいかに扶あれど。これもさきの世に此國にあとをたるべきすぐせこそありけめ。はや歸りておほやけに此よしをそうせよと仰られければ。いはんかたなくてのぼりて。帝にかくなん有つると奏しければ。いふかひなし。そのをのこをつみしても。いまは此みやをとりかへし。都にか