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Page:Gunshoruiju18.djvu/371

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群書類從卷第三百二十八


紀行部二

さらしな日記

菅原孝標朝臣女


あづまぢの道のはてよりもなをおくつかたにおひ出たる人。いかばかりかはあやしかりけむを。いかに思ひはじめける事にか。世中にものがたりといふもののあんなるを。いかでみばやとおもひつゝ。つれなるひるまよゐなど[にイ]あねまゝ母などやうの人々の其物語。かのもの語。ひかる源氏のあるやうなど。ところどころかたるをきくに。いとゞゆかしさまされど。わがおもふまゝに。そらにいかでかおぼえかたらむ。いみじく心もとなきまゝに。とうじんにやくし佛をつくりて。手あらひなどして。人まにみそかにいりつゝ。京にとくあげ玉ひて。ものがたりのおほく候なる。あるかぎり見せたまへと身をすてゝぬかをつき祈り申ほどに。十三になるとしのぼらんとて。九月三日かどでして。いまだちといふ所にうつる。年ごろ遊びなれつるところをあらはにこぼちちらして。立さはぎて。日の入きはのいとすごく霧わたりたるに。車にのるとて打みやりたれば。人まにはまいりつゝぬかをつきしやくし佛の立たまへるをみすて奉る。かなしくてひとしれず打なかれぬ。かどでしたる所は。めぐりなどもなくて。かりそめのかややのしとみなど