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ほとゝぎすのこゑをきゝて。
此比はねてのみそまつ時雨
はこ鳥のなくをきゝ侍て。
故鄕のことつてかとてはこ鳥のなくをうれしと思ひける哉
ぬなはのながきを人のもてまうできたるをみて。
我ならはいけといひても浮ぬなは遙にくるはまつ留てまし
夜ぶかくほとゝぎすをきゝて。
身をつめは哀れとそきく時鳥よをへていかゝ思へはかなし
五月五日。あめのふり侍に。
世の中のうきのみまさるなかめには菖蒲のね社先流れけれ
たちばなの木に郭公のなき侍に。
郭公花たちはなのかはかりになくはむかしや戀しかるらん
山
都にはしつえの梅も散はてゝたゝ香はかりの露
ほとゝぎすのなくを。
我はかりわりなく物や思ふらん夜ひるもなくほとゝきす哉
六月七日。またつとめて。
夏山のこのしたかけに置露のあるかなきかのうき世成けり
よもすがら月をながむる曉に。
つれ〳〵と慰まねともよもすからみらるゝものは大空の月
つごもりにねられず侍まゝに。夜ふくるまで侍て。
そらはると闇のよる〳〵眺むれは哀れに物そ見え渡りける
おなじ月の六日。つゆのほたるにかゝりて侍りければ。
戀わひてなくさめにする玉つさにいと
七日のつとめて。かはらへ人のいざと申に。
たなはたのあまの羽衣すきたらはかくてや我を人の思はん
おなじ日。うらやまれぬるなど思ひ侍て。
七夕をもとかしとみし我身しもはてはあひみぬ例とそなる
又。
逢ことをけふとたのめて待たにもいか計りかはあるな七夕
ある僧のもとよりをみなへしををこせて。
白露のをくに咲けるをみなへしよ半にやいりて君をみる覽