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われをとふ人こそなけれ昔みし都の月はおもひいつらん
又こと人々のさるべきもなくなりにけりときゝて。
なそもかくみとみし人は消にしをかひなき身しも何留り劍
澤にすむこまほしからぬ道にいてゝ日暮し袖を濡しつる哉
おはりなる
かひなきは猶人しれすあふことの遙なるみのうらみ成けり
からくにのにしなりとてもくらへみむ二村山の錦にはにし
その夜
ねらるやとふしみつれとも草枕有明の月も
しかすがのわたりにて。わたしもりのいみじうぬれたるに。
旅人のとしも見えねとしかすかにみなれてみゆる渡守哉
紫のくもとみつるはみや地山名高き藤のさける也けり
たつならぬ高師の山のすへつくり物思ひをそやくとすと聞
人しれすはまなの橋のうちわたし歎そ渡るいくよなきよを
はしのこぼれたるを。
中絕て渡しもはてぬ物ゆへになにゝはまなの橋をみせけん
まかりつきてのち雨のふり侍にければ。かくおぼえ侍。
誰に言むひまなき比のなかめ