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れに恃や。

すのりとるぬまかは水におり立て取にもまつそ袖は濡ける

さき見る人のねごろになりて。うとうもてなして侍に。月のあはれなりし夜。

ほのかにもほのみしものを遙かにも雲かくれ行空の月かな

これはとをたあふみの日記。


三月十日。あづまへまかるに。つゝみてあひみぬ人をおもふ。

都いつるけふ計りたにはつかにも逢みて人に別れにしかは

あはたでらにて京をかへり見て。

都のみかへりみられしあつま路に駒の心にまかぜてそゆく

せきやまの水のほとりにて。

せき水に又衣手はぬれにけりふたむすひたにのまぬ心に

人のとうくだりねといひしをせきいづるほどに思いでて。

うかりける身は東路の關守も思かほしてはえこそイとゝめさりけ

をかだ岡田のはらといふ所をめぐるに。

うきなのみおひ出る物を雲雀あかる岡田の原をみすてゝそ行

かゞみ山のみねに雲ののぼるを。

鏡山いるとてみつるわか身にはうきより外の事なかりけり

あかつきにきじのなくを。

すみなれののへにをのれは妻とねて旅ゆきイかほに鳴雉子哉

はるかにひえの山をみて。あすよりはかくれぬべしと思て。

けふ計りかすまさらなんあかて行都の山をあれとたにみん

むかしこもりてをこなひ侍し山寺イの火にやけて。ありしにもあらずなりて。あむし歟 つイちのまへにありしやまぶきの草のなかにまじりて所々あるを。

あたなりとみる植し山吹の花の色しもくたらさりけり

また。

山吹のしるしはかりもなかりせはいつこを住し里としらまし

そこよりくだるに日くれぬ。かたらひしひじりのある所にまかりたれば。その人はしにけり。もろともにはじめはべりしに。ふけかう普賢講