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みたらし川のつらに侍しに。もみぢのかたへはきくにあをばなみはへしを。人々みたまへてかへり侍てみえず侍しに。ちり侍しかば。
御手洗のもみちの色は川のせに淺きも深くなりはてにけり
京よりまうできたりける人の侍らざりけるほどにまうできて。かういひをきてまかりにける。しものみやしろなりしほどに。
みたらしのかさりならては色のみえ
とてまかりにければ。こと人をかくなんといひていざなひて。はし殿にもろともに侍しに。日のくれ侍しかば。
ひとの落る御手洗川の紅葉はをよにいるまても折てみる哉
夜ねられ侍ぬまゝにきゝ侍れば。まことに夜中うちすぐるほどに。ちどりのなき侍しかば。
曉やちかくなるらんもろともにかならすもなく川千鳥かな
神のおまへによゐあかつきとさぶらひて佛の御事をいのり申に。
いひいつれは淚さし出る人の上を神もあはれや思すくらし
しものをきて侍しつとめて。もみぢはいかにと人のいひて侍しに。
をく霜のあさふす程やあらはあらん今一日たにみぬはもみち葉
紅葉のちりはてがたに風のいたうふき侍しかば。
十月一日
もみち葉のこのもとゝしにみもわかす心をのみも廻らかす哉
つきを。
山のはを出かてにする有明の月は光そほのかなりける
しぐれを。
ことそとて思ふともなき衣手に時雨のいたく降にけるかな