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かもの
鹿の音にいとゝわりなさまさりけり山里に社秋はすませめ
すゞか山に。
をとにきく神の心をとる〳〵とすゝかの山をならしつる哉
かはのまゝに
わりなくも心一つをくたくかなよをへて岸にたつ浪はたゝ
つのくになるてらにまかりけるに。神なびのほどにしかのなきければ。
我ならぬ神なひ山のまさきへてつのまく鹿もねこそ鳴けれ
よのこゝろうきこゝろひとつに思わびて。
君たにもみやこなりせは思ふ事まつかたらひて慰めてまし
十月かもにこもりて。あかつきがたに。
みつかきにふる初雪を白妙のゆふしてかくと思ひけるかな
二三日侍てきぶねのもとの宮に侍しに。むらぎえたる雪ののこりて侍しかば。うちとけぬことや思いでけん。
白雪のふるかひもなき我身こそきえつゝ思へ人はとはぬを
もみぢのえもいはず見え侍しかば。みくらし侍て。夜になしていで侍とて。
紅葉はの色のあかさにめをつけてくらまの山に夜たとる哉
ある人のはつ雪のふり侍しつとめて。きくにさしていひて侍し。
ませの中に移ろふ菊のけさいかに初雪といはぬ君を恨みん
かへし。
初雪のふるにも身こそ哀なれとふへき菊のそのしなけれは
あけぼのにながめたちて侍しに。きりのいみじうみるまゝにたちわたりて。そらに見ゆらんとまことにいひ侍ぬべかりしかば。
からにしき染る山には立田姬きりのまくをそ引まはしたる
かたらふ
こゝにとてくるをは神もいさめしを御手洗川の川藻成とも
かへし。
みな人のくるにならひて御手洗のかはも尋ねす也にける哉