て。まろねにねたり。やゝといへば。おどろきて。とくいり給へといひていれつ。おほんあるじせんとて。ごいしけのおほきさなるいものかしらをとり出てやかす。これぞいものはゝといへば。さはちのあまさやあらんといへば。人の子にこそくはせめといひて。けいめいすれば。さてかねうてば御堂へまいりぬ。かしらひきつゝみて。みのうちきつゝ。こゝかしこにかずしらずまうであつまりて。れいしはてゝまかり出るに。あるはそ上の御まへにとゞまるもあり。らい堂のなかのはし・のもとに。みのうちきつゝ忍びやかにかほ引いれつゝあるもあり。ぬかづきだらによむもあり。さま〴〵にきゝにくくあらはにそと聞もあり。かくてさぶらふほとに。霜月の御はかうになりぬ。そのありさまつねならずあはれにたふとし。はかうはてゝのあしたに。ある人かういひをこせたり。
をろかなる心の暗にまとひつゝ浮世にめくる我身つらしな
いほぬしもこの事をまごゝろにたう心を佛のごとしとおもふ。
白妙の月また出ててらさなむかさなる山の遠にいるとも
また年ごろ家につくせることをくいて。
玉のをもむすふ心のうらもなく打とけてのみ過しけるかな
さてさぶらふほどに。霜月廿日のほどのあすまかでなむとて。をとなし川のつらにあそべば。人しばしさぶらひ給へかし。神もゆるし聞え給はじなどいふほどに。かしらしろきからすありて。
山からすかしらも白く成にけり我かへるへき時やきぬ覽
さて人のむろにいきたれば。ひのきを人のたくか。はしりはためくをとりて
侍れば。むろのあるじ。この山はほだくひ
けんありて。