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をこたらずあらんによりてなり。ねがはくはわれ。春は花を見。秋はもみぢを見るとも。にほひにふれ色にめでつる心なく。朝の露夕の月をみるとも。せけんのはかなきことををしへ給へ。
世中をいとひ捨てんのちはたゝ住のえにある松とたのまむ
いづみなる信太のもりにてあるやう有べし。
我思ふことのしけ
きの國の吹上のはまにとまれる月いとおもしろし。此濱は天人常にくだりてあそぶといひ傳へたる所なり。げにそもいとおもしろし。今宵のそらも心ぼそうあはれなり。夜のふけゆくまゝに。かものうはげの霜うちはらふ風も空さびしうて。たづはるかにて友をよぶ聲もさらにいふべきかたもなう哀なり。それならぬさま〴〵の鳥ども。あまた洲崎にもむらがれてなくも。心なき身にもあはれなることかぎりなし。
をとめこか天の羽衣ひきつれてむへもふけ井の浦におる覽
月の海のおもにやどれるを。浪のしきりあらふを見て。
月に浪かゝるおり又ありきやとふけゐの浦の蜑にとはゝや
波いとあはれなるよしを。また。
浪にもあれかゝるよの又有はこそ昔をしれる海士も答へめ
ふき上の濱にとまれる。夜ふかくそこをたつに。なみのたかう見ゆれば。
あまのとを吹上の濱に立浪はよるさへみゆる物にそ有ける
しゝのせ山にねたる夜。しかの鳴をきゝて。
うかれけむ妻のゆかりにせの山の名を尋ねてや鹿もなく覽
いはしろの野にねたる夜。あるやうあるべし。
石代のもり尋てといはせはやいくよか松はむすひはしめし
ちかの
うつ浪にまかぜてをみん我拾ふはまゝの數に人もまさらし