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五日。けふからくして。いづみのなだよりをつのとまりをゝふ。松ばらめもはる〴〵なり。これかれくるしければよめるうた。
ゆけとなをゆきやられぬは妹かうむをつの浦なる岸の松原
かくいひつゞくるほどに。ふねとくこげ。ひのよきにともよほせば。かぢとりふなこどもにいはく。みふねよりおほせたぶなり。あさきたのいでこぬさきにつなではやひけといふ。このこと葉のうたのやうなるは。かぢとりのをのづからのことばなり。かぢとりはうつたへにわれうたのやうなることいふとにもあらず。きく人のあやしくうためきてもいひつるかなとてかきいだせれば。げにみそもじあまりなりけり。けふなみなたちそと人々ひねもすにいのる。しるしありて風なみたゝず。いましかもめむれゐてあそぶところあり。京のちかづくよろこびのあまりに。あるわらはのよめる歌。
祈りくるかさまともふをあやなくも鷗さへたに浪と見ゆ覽
といひてゆくあひだに。いし津といふ所の松原おもしろくて。はまべとをし。またすみよしのわたりをこぎ行。ある人のよめる歌。
今見てそ身をはしりぬる住の江の松より先に我はへにけり
こゝにむかし
すみの江に舟さしよせよ忘草しるしありやとつみて行へく
となん。うつたへにわすれなんとにはあらで。戀しきこゝちしばしやすめて。またもこふるちからにせんとなるべし。かくいひてながめつゞくるあひだに。ゆくりなくかぜふきて。こげども〳〵しりへしぞきにしぞきて。ほとほとしくうちはめつべし。かぢとりのいはく。この住吉の明神はれいのかみぞかし。ほしきものぞおはすらん。今