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Page:Gunshoruiju18.djvu/351

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 たまくしけはこの浦浪たゝぬひはうみを鏡と誰かみさらん

またふなぎみのいはく。この月までなりぬることとなげきて。くるしきにたへずして。人もいふことゝて。心やりにいへるうた[イナシ]

 ひく舟の綱手の長き春の日をよそかいかまて我はへにけり

きく人のおもへるやう。なぞたゞごとなるとひそかにいふべし。ふなぎみのからくひねりいだして。よしとおもへることを。ゑじもこそしいへ[たべイ]とて。つゝめきてやみぬ。にはかに風なみたかければとゞまりぬ。

二日。雨風やまず。ひゝとひ夜もすがら神佛をいのる。

三日。うみのうへ昨日のやうなれば舟いださず。風の吹ことやまねば。きしのなみたちかへる。これにつけてよめるうた。

 をゝよりてかひなきものはおち積る淚の玉をぬかぬなり鳧

かくてけふはイ暮ぬ。

四日。かぢとりけふかせ雲のけしきはなはだあしといひて。船いださずなりぬ。しかれどもひねもすに浪かぜたゝず。このかぢとりは日もえはからぬかたゐなりけり。このとまりのはまには。くさのうるはしきかひいしなどおほかり。かゝればたゞむかしの人をのみ戀つゝ。ふねなる人のよめる。

 よする浪打もよせなむ我こふる人わすれ貝おりてひろはん

といへれば[れイナシ]。ある人[のイナシ]たへずして。ふねの心やりによめる。

 忘貝ひろひしもせし白玉をこふるをたにも形見とおもはむ

となんいへる。をんなこイのためにはおやをさなくなりぬべし。玉ならずもありけんをと人いはんや。されどもしゝこ[死にしこイ]かほよかりきといふやうもあり。猶おなじところに日をふることをなげきて。あるをんなのよめるうた。

 てをひてゝ寒さもしらぬ泉にそ汲とはなしに日比へにける