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Page:Gunshoruiju18.djvu/35

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に歸りて。けふはつねよりもなこり戀しうおもひ出られ。わりなう覺ゆれは。きこゆ。

 つれとけふかそふれは年月に昨日そ物は思はさりける

御覽して。あはれとおほして。こゝにも。

 思ふ事なくて過しゝおとゝひを昨日とけふになすよしも哉

とおもへと。かひなくなん。なをおほしたてとあれと。いとつゝましくて。するともおもひたゝぬほとは。たゝうちなかめてのみあかしくらす。いろ見えし木のはものこりなく。空もあかうはれたるに。やういりはつる日の影こゝろほそうみゆれは。れいのきこえ侍り。

 なくさむる君もありとはおもへとも猶夕くれは物そ悲しき

とあれは。

 夕暮は誰もさのみそおもほゆるまちわふ君そ人にまされる

とおもふこそあはれなれ。たゝ今まいりこはやとあり。又の日のまたつとめて。霜のいとしろきに。さていまのまはいかゝとあれは。

 おきなから明せる霜の朝こそまされる物はよになかりけれ

なときこえかはす。例のあはれなることなとかゝせ給ひて。

 われひとりおもふは思かひもなしおなし心に君もあらなん

御返。

 君は君我は我ともへたてれはこゝろこゝろにあらん物かは

かくて女。かせにや。おとろしうはあらねと。なやましうすれは。いかにととはせ給ふ。よろしう成であるほとに。いかにそとゝはせ給たれは。すこしよろしうなりにて侍は。しはしいきて侍らはやと思給へつるにそ。つみふかう。さるは。

 たえし比たえねと思ひし玉の緖を君により又おしまるゝ哉

とあれは。いとうれしき事かなとて。

 玉の緖はたえんものかは契りてしなかき心に結ひこめてき

かくいふほとに。としも殘りなけれは。春たつ