このページは校正済みです
ほしくて。まことにかくもおほされはとて。
今の間に君きまさなん戀し迚なもあるものを我ゆかんやは
と聞えたれは。
君いまは名のたつことをおもひける人からかゝる心とそみる
これにさへはらさへたちぬれとそある。かくわふるけしきを御覽して。たはふれせさせ給ふとはみれと。なをくるしうて。なをいとあやしうこそ侍れ。いかにもありて。御覽せさせまほしうこそと聞えさせたれは。
うたかはゝ又うちみしと思えとも心に心かなはさりけり
御返し。.
うらむらん心はたゆるかきりなくたのむ君をそ我も疑ふ
なと聞えてあるほとに。暮ぬれはおはしましたり。なを人のいふ事あれは。よもとは思ひなから。聞えしに。かゝる事いはれしとおもひ給はゝ。いさときこゆるに。いさ給へかしなとのたまはせて。明ぬれは出させ給ぬ。かくのみたえすの給はすれと。おはします事はかたし。雨風なといたうふりふく日しも。をとつれさせ給はねは。人すくなゝる所の風の音おほしやらぬなめりかしと思ひて。くれつかたきこゆ。
霜かれはわひしかりけり秋風のふくには荻の音つれもしき
と聞えたれは。かれよりのたまはせたりける御文をみれは。いとおそろしけなる風をいかゝとなんあはれに。
かれはてゝ我よりほかにとふ人も嵐の風をいかゝきくらん
とおもひやりきこへるこそいみしけれとそある。のたまはせけるを見るもおかしうて。所たかへたる御物いみにて。しのひたる所におはしますとて。れいの御車あれは。いまはたゝともかくものたまはんにしたかひてとおもへは參りぬ。心のとかに御ものかたりおきふしきこえて。つれ〳〵もまきるれはそ。ましてまいりなまほしきに。御物忌すきぬれは。れいの所