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Page:Gunshoruiju18.djvu/349

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こゆ。

廿六日。まことにやあらん。かいぞくおふといへば。夜なかばかりより[イナシ]船をいだしてこぎくる。道にたむけする所あり。かぢとりしてぬさたひまつらするに。ぬさのひんがしへちれば。かぢとりのまうしてたてまつる事は。このぬさのちるかたにみふねすみやかにこがしめ給へとまうしてたてまつる。これをきゝて。あるめのわらはのよめる。

 わたつみのちふりの神に手向する幣の追風やますふかなん

とぞよめる。このあひだほどイに風のよければ。かぢとりいたくほこりて。船にほあげなどよろこぶ。そのおとをきゝて。わらはもおきなもいつしかと[しイナシ]おもへばにやあらん。いたくよろこぶ。このなかにあはぢのたうめといふ人のよめるうた。

 おひかせのふきぬる時は行舟のほてうちて社嬉しかりけれ

とぞ。ていけ天氣のことにつけていのる。

廿七日。かせふきなみあらければ船いださず。これかれかしこくなげく。をとこだちの心なぐさめに[イニナシ]からうたに。日をのぞめばみやことほしなどいふなることのさまをきゝて。あるをんなのよめる歌。

 日をたにも天雲近く見るものを都へと思ふみちのはるけさ

またある人のよめる。

 吹風のたへぬ限りしたちくれは浪路はいとゝ遙けかりけり

日ひとひ風やまず。つまはじきしてねぬ。

廿八日。夜もすがら雨やまず。けさも。

廿九日。ふねいだしてゆく。うらとてりてこぎゆく。つめのいとながくなりにたるを見て。ひをかぞふれば。けふは子日なりければきらず。む月なれば京のねの日の事いひいでて。こまつもがなといへど。海なかなればかたしかし。あるをんなのかきていだせる歌。