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十九日。ひあしければふねいださず。
廿日。きのふのやうなれば船いださず。みなひとびとうれへなげく。くるしく心もとなければ。たゞ日のへぬるかずを。けふいくか。はつかみそかとかぞふれば。
靑海原ふりさけみれはかすかなるみかさの山に出し月かも
とぞよめりける。かのくに人きゝしるまじくおもほへたれども。ことの心をおとこもじにさまをかきいだして。こゝのことばつたへたる人にいひしらせければ。心をやきゝえたりけん。いとおもひの外になむめでける。もろこしとこの國とはこと〳〵なるものなれど。月の影はおなじことなるべければ。人の心もをなじことにやあらん。さていまそのかみをおもひやりて。あるひとのよめる歌。
廿一日。うの時ばかりに船いだす。みなひとびとのふねいづ。これを見れば。春のうみに秋のこの葉しも。ちれるやうにぞありける。おぼろげの願によりてにやあらん。風もふかずよき