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Page:Gunshoruiju18.djvu/346

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く。このあひだに。雲のうへも海のそこも。をなしごとくになんありける。むべも昔のをとこは。さをはうがつなみのうへの月を。ふねはおさふ海のうちのそらを。とはいひけん。きゝざれにきけるなり。またある人のよめる歌。

 みな底の月のうへより漕舟の掉にさはるはかつらなるらし

これをきゝてあるひとの又よめる。

 かけみれは浪の底なる久かたの空こきわたる我そわひしき

かくいふあひだに夜やうやくあけゆくに。かぢとりらくろき雲にはかにいできぬ風ふきぬべし。みふねかへしてんといひて舟かへる。このあひだに雨ふりぬ。いとわびし。

十八日。なをおなじところにあり。海あらければ船いださず。このとまり。とほく見れどもちかくみれども。いとおもしろし。かゝれどもくるしければなにごともおもほへず。をとこどちは心やりにやあらん。からうたなどいふべし。船もいださでいたづらなれば。あるひとのよめる。

 いそふりのよする礒には年月をいつともわかぬ雪のみそ降

この歌はつねせぬひとのとなり。また人のよめる。

 風による浪のいそにはうくひすも春もえしらぬ花のみそ咲

この歌どもをすこしよろしときゝて。ふねのをさしけるおきな。つきごろのくるしき心やりによめる。

 たつ浪を雪か花かとふく風そよせつゝ人をはかるへらなる

このうたどもを人のなにかといふを。ある人の又きゝふけりてよめる。その歌よめるもじみそもじあまりなゝもじ。人みなえあらでわらふやうなり。うたぬしいとけしきあしくてゑず。まねべどもえまねばす。かけりともえよみ[すイ]ゑがたかるべし。けふだにいひがたし。ましてのちにはいかならん。