コンテンツにスキップ

Page:Gunshoruiju18.djvu/30

提供:Wikisource
このページは校正済みです

るに。やうあけぬらんかしとおもふに。門をうちたゝく。あなおほえなと思へと。とはすれは。宮の御文なりけり。おもひかけぬ程なるを。こゝろやゆきてとあはれにおほえて。妻戶をおしあけて見れは。

 見るや君さようちふけて山端にくまなくすめる秋夜の月

かけはしうちなかめられて。常よりもあはれにおほゆ。かとをあけねはおほつかなう。つかひまちとをに覺ゆらんとて。

 更ぬらんと思ふ物からねられねと中々なれは月はしも見す

とあるを。をしたかへたるくちつきをかくにしもあらすかしとおほす。いかてか近うて。かかるはかなしこともいはせてきかむと思したつ。二日はかりありて。女車のやうにて。やをらおはしましぬ。晝なとはまた御覽せられねは。耻かしけれと。樣あしうはひかくるへきにもあらす。又の給はするやうもあらす。はち聞えさせてやあらんするとて。ゐさり出たり。日比のおほつかなさなとかたらはせ給て。しはしうちふさせ給て。このきこえさせしやうにはやおほしたて。かゝるありきのつねにうゐしくおほゆるを。さりとてまいりこぬはいとおほつかなけれは。はかなき世中にくるしうとの給はすれは。ともかくもの給はせむにと思ひ給ふるに。見てもなけくといふことにこそ思給へ。わつらひぬれと聞ゆれは。よし心み給へ。しほやき衣にそあらんとの給ひて。出させ給ふ。まへちかきすいかいのもとに。おかしけなるまゆみのあるか。すこしもみちたるを御覽して。かうら高欄にをしかゝらせ給ひて。

 ことのはふかくなりにけるかな

との給はすれは。

 しら露のはかなくをくと見し程に

と聞えさするほと。なをなさけなからすとお