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Page:Gunshoruiju18.djvu/29

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と聞えさせたり。ねたうせんせられぬるかなとおほして。

 つまこふとおきあかしつる霜なれは

とそうちの給はせたる。たゝ今そ人まいりたれは。うたてあへきものかな。とくと思ひつるにとて。御けしきあしうて給はせたれは。もていきて。またこれよりきこえさせ給はさりける時よりめし侍けるを。今まて參らすとてさいなむなりとて。御文をとり出たり。よへの月はいみしうあかゝりしものかなとて。

 ねぬるよの月はみるやとけさはしも起ゐてまてと問人もなし

けにかれよりの給はせけるとみゆるも。同し心におかしうて。

 まとろまて一夜詠し月みれとおきなからしも明し顏なる

ときこえさせ。このわらはのいかにさいなむらむとおくれは。おかしうて。はしに。

 霜の上に朝日さすめり今は早打とけにけるけしき見せなん

いたうわひはへめりとあり。見給ひて。けさしたりかほにおほしたりつるもいとにくし。此わらはころしてはやとまてなんとて。

 朝日さし今はきゆへき霜なれと打とけかたき空のけしきそ

とあれは。ころさせ給へるなるこそとて。

 君はこす偶々みゆる童をはいけとも今はいはしとおもふか

と聞えさせ給へれは。うちわらはせ給ひて。

 ことはりや今はころさしこの童忍ひのつまのいふことにより

まことか。手まくらの袖はわすれ給にけるとあれは。

 人しれぬ心にかけてしのふをはわするとや思ふ手枕のそて

と聞えたれは。

 物もいはてやみなましかは懸てたに思ひ出ましや手枕の袖

猶かくはおほしつとそある。かくて二三日をともせさせたまはす。たのもしけにの給はせしことゝもゝ。いかになりぬるにかと思ひつゝくるに。いもねられす。めをさましてふした