Page:Gunshoruiju18.djvu/26

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れといひつへからん事ひとついはむとなん思ふ。それよりの給事のみなん。さはおほ[ゆ]るを。ひとつとの給へり。あなしたりかほと思へと。さはえきこえしと申さむも。いとさかしけれは。のたまはせむ事はいかてかと計にて。

 おしまるゝ淚にかけはとまらなん心もしらす秋はゆくとも

まめやかには。かたはらいたきことになむ侍るとてはしに。さても。

 君ををきていつち行らん我たにも浮世中にしゐてこそふれ

とあれは。いまおもふやうなりと聞えさせむも。見しかほなり。あまりそをしはかり給へるよのと侍めるは。

 打すてゝ旅行人はさもあらはあれ又なきものに君し思はは

ありぬへくなんとの給はせたり。かくいふほとに。十月にも成ぬ。十よ日のほとにおはしましたり。おくはくらうておそろしけれは。はしちかううちふさせたまひて。あはれなる事のかきりをの給はするに。かひなくはあらす。見れは月のくもりてしくるゝほとなり。わさとあはれなるさまをつくり出たるやうなり。思みたるゝ程の心ちは。いとそゝろさむきや。宮御覽して。人のびなきにのみいふめる。あやしきわさかな。こゝにかくてあるよとあはれにおほされて。女のねたるやうにて。おもひみたれふしたるを。やゝおとろかし給ひて。

 時雨にも露にもあらてぬたる夜はあやしくぬるゝ手枕の袖

との給はすれと。よろつに物のみわりなく覺ゆるに。御いらへ聞ゆへき心ちもせねは。物も聞えさせて。たゝ月の影に淚のおつるを哀と御覽して。なといらへはし給はぬ。はかなき事申侍るも。心つきなしと思しけるにこそとあれは。いかに侍るにか。心地のかき亂るやうにし侍る。耳にはとまらぬにも侍らすとて。よし心みさせ給へ。手枕の袖と云事忘るゝ折や侍