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Page:Gunshoruiju18.djvu/20

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たる御樣にはあらて。御なをしなとのいたうなれたるしもそおかしうみゆ。物もの給はて。たゝ御扇に文をさしいれさせ給て。御つかひのとくまかりにけれはとて。さしいれさせ給て。物聞えんにほと遠くてびなけれは。女あふきをさしいたしてとりつ。宮ものほりなんとおほしたり。せんさいのおかしきなかをありかせ給て。人は草葉の露なれやなとの給はす。いとなまめかし。ちかうよらせ給て。によひはまかり出なんとよ。誰に忍ひつるも見あらはしになん。あすは物忌といふなりつるに。なくはあやしとおもひなんとて。かへらせ給へは。

 こゝろみに雨もふらなん宿過て浦行月の影やとまると

人のいふほとよりもこめきてあはれにおほさる。あかきみやとて。しはしのほらせたまひて。出給ふとて。

 あちきなく雲井の月にさそはれて影こそいつれ心やはゆく

とておはしましぬる後すたれをあけて。有つる御文見れは。

 我ゆへに月を詠むとつけつれはまことかと見に出てきにけり

とそあるを。うれしくおはしますかな。いかにいとあやしき物に。きこしめしたるへかめるに。きこしめしなをされにしかなと思ふ。宮もいふかひなからす。つれの慰にはとおほさるゝ程に。ある人々の聞ゆるやう。この比は源少將なといますなり。晝ものし給なりといへは。或人ありて。兵部卿もおはすなるはなと口々に聞ゆるに。いとあはしうおほされて久しう御文もなし。ことねりわらはきたり。ひすましわらは例に語へは。物なといひて。御文やあるといへは。さもあらす。一日おはしましたりしかと。みかとに車のありしを御覽して。御せうそこもなきにこそあめれ。人おはしましかよふやうにそきこしめしたりけれなと