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Page:Gunshoruiju18.djvu/21

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いひていぬ。かくなんいふときゝて。いとおしく。なにやかやとわさと聞えさせ。わさとたのみきこえさする事こそなけれと。時々もかうおほしいてんほとはきこえさせかよはしてあらんとこそおもひつれ。事しもこそあれ。けしからぬことにつけても。かうおほされぬるとおもふも。いと心うくて。なそもかくとなけくほとに。御文あり。日比はあやしう亂り心地のなやましさになん。いつそやも參りて侍り しかと。折ふしあしうてのみかへれは。いと人けなきこゝちしてなむとて。

 よしやよし今はうらみし磯に出てこき離れ行海人の小舟を

とあれと。あさましき事をきこしめしたなれは。はつかしけれは。きこえさせんもつれなけれと。此たひはかりはとて。

 袖の浦にたゝわかやくとしほたれて船流したる蜑と社なれ

と聞えさせつ。さいふほとに七月にもなりぬ。七日に。すき事ともする人々のもとより。たなはたひこほしなといふことゝもあまたみゆれとめもたゝす。かゝるおりなと。宮のすくさすの給はせし物を。むけにわすれさせ給にけるかなとおもふほとにそ御文ある。みれはたゝ。

 思ひきや七夕つめにみをなして天の河原をなかむへしとは

とあれは。さはいへと。なをえすくし給はさめりとおもふもおかしうて。

 詠むらん空をたにみす棚機にいまるはかりの我みと思へは

とあるを御覽しても。猶えおほしすつましとおほすへし。つこもりかたになりて。いとおほつかなく成にけるを。なとか時々は人數に思しめされぬなめりかしとの給はせたれは。女。

 ね覺ねはきかぬ成らん荻風はふかさらめやは秋のよな

と聞えたれは。たちかへり。あかきみやねさめねはな[と脫歟]物思ふときはこそ。をろかにもとて。

 荻風はふかはいもねて今よりそ驚すかときくへかりける