コンテンツにスキップ

Page:Gunshoruiju18.djvu/17

提供:Wikisource
このページは検証済みです

そ使はせおはしまさめ。輕々しき御[イナシ]ありきは猶いとみくるしき事。そか中にも。人々あまたいみしく通ふ所也。びなき事もいてまうてきなん。すへてよからぬことは。この右近のそうなにかしか初むるなり。故宮もこれこそはゐてありき奉りしか。よる夜中とありかせ給ふては。よき事やはある。かゝる御ありきの御供にありかん人々は。大殿道長に申さむ。世中はけふあすともしらすかはりぬへかめり。殿のおほしをきてし事ともある物を。よのありさま御覽しはつるまては。かゝる御ありきなくてこそおはしまさめなと聞え給へは。いつちかいかむ。つれなれは。はかなきすさひ事なむとするにこそあれ。ことしう人のいふへきにもあらすとはかりの給はせむには。あやしくすけなき物にこそあれ。さるはいと口おしからぬ物にこそあめれ。よひてやをきたらましと思せと。さてもまして聞にくき事そあらんなと思し亂るゝほとに。おほつかなく成ぬ。辛うしておはして。あさましう心より外に覺束なくなるを。をろかになおほしそ。御あやまとなん思ふ。かく參りくるをびなしと思ふ人々數多あるやうにきけは。いとおしくなん。おほかたもつゝましきうちにいとゝ程へぬると。まめやかに御物語し給ひて。いさ給へ。今宵はかり人もみぬ所あり。心のとかに物も聞えんとて。車をさしよせ給ひて。たゝのせにのせ給へは。われにもあらすのりても。人もこそきけと思ふいけは。いたう夜ふけにけれは。しる人もなし。やをら人もなきらうのあるにさしよせて。おりさせ給ひぬ。月もいと明けれは。おりねと忍ひての給へは。さまあ[あさまイ]しきやうなれはおりぬ。さりや[イニナシ]人もみぬ所そかし。今よりもかやうに聞えさせむ。人なとも