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まもともかくも思はぬを。よの人は樣々いふへかめれと。身のあらはこそとのみ思ひてすくす。宮より。雨のつれ〳〵はいかゝとて。
おほかたにさみたるゝとや思ふらん君戀渡るけふの詠めを
とあれは。おりすくい給はぬをおかしと見る。あはれなるおりしもとおもひて。
忍ふらん物ともしらてをのかたゝみをしる雨と思ひける哉
とかきて。かみのひとへをひき返して。
ふれはよのいとゝ憂身のしらるゝを今日の詠めに水增ら南
待遠にやと書すさひたるを御覽して。立返り。
何せんにみをさへ捨てんと思らん天か下には君のみやふる
たれもうきよをとあり。五月六日になりぬ。雨猶やます。ひとひの御返の。つねよりも物おもひたりしさまなりしをあはれとおほし出て。いたくふりあかしゝつとめて。こよひの雨のをとは。いとおとろ〳〵しかりつるをなと。まめやかにの給はせたるを。
よもすから何事をかはおもひつる窓うつ雨の音をきゝつゝ
かけ
我もさそ思やりつる雨の音をさせるつまなき宿はいかにと
ひるつかた。水まさりたりときゝて。人々見るに。宮も御覽して。いまのほといかゝ。水みになんいてはへりつる。
大水のきしつきたるにくらふれと深き心はなをそまされる
さはしり給へりやとある。御返し。
今はよもきしもせしかし大水の深きこゝろは川と見せつゝ
かひなしやと聞えさせたり。おはしまさむと思して。御火取なとめすほとに。侍從のめのとまうのほりて。出させおはしますはいつちそ。このこといみしう人々申すなるは。なにのやむことなき人にもあらす。めしつかはせおはしまさんとおほしめさ