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のたまひしものをとかなしう思ひみたるゝほとに。れいのわらはきたり。御文あらむとおもふほとに。さもあらねは。心うしとおもふほとも。すき〳〵しや。かへりまいるに聞ゆ。
またましもかはかり社︀は有まし[か]思もかけぬけふの夕暮
宮御らんして。けにいとおしうもあるかなとおほせと。かゝる御ありきさらにせさせ給はす。北の方と。れいの人の中のやうにこそおはしまさねと。よことにいてんはあやしとおほしぬへし。故宮の
ひたすらにまつ共いはゝ休らはて行へきものを妹か家路に
をろかにやおほしめすらんとおもふこそくるしけれとあれは。たゝなにかこゝにはとて。
かゝれとも覺束なくも思ほへて是も昔のえにこそあるらめ
とおもひ給ふれは。なくさめすはたへんやは。つゆをときこえたり。おはしまさんとおほしめせと。ひころに成ぬ。つこもりの日。女。
郭公よに隱れたる忍ひねをいつかはきかんけふしすきなは
ときこえさせたれと。人々あまたさふらふほとなれは。御らんせさせて
忍ひねはくるしきものを郭公こたかき聲をけふよりはきけ
とて。二三日ありてしのひてわたらせ給たり。女はものへまいらむとて。
いさやまたかゝる思を知ぬ哉あひてもあはて明るものとは
あさましとあり。さそあさましきさまにおほしつらんといとおしくて。