Page:Gunshoruiju17.djvu/245

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かへり事申樣。此めのわらはは。たえて宮づかへ仕べくもあらず侍るを。もてわづらひ侍る。さりともまかりて仰給はんと奏す。是を聞召て仰給ふやう。などか翁の手におほしたてたらん物を心にまかせざらむ。此女もし奉りたる物ならば。翁にかふむり[をイ]などかたばせざらん。翁喜て家に歸りて。かぐや姬にかたらふやう。かくなむ帝の仰給へる。なをやはつかふまつり給はぬといへば。かぐや姬答ていはく。もはらさやうの宮づかへつかふまつらじと思ふを。しゐてつかふまつらせたまはゞ消うせなむず。みつかさかふぶりつかふまつりてしぬばかり也。翁いらふるやう。なし給そ。つかさかふぶりも我こを見たてまつらでは何にかせむ。さはありとも。などか宮づかへをしたまはざらん。しに給ふべきやうやあるべきと云。なをそらごとかとつかまつらせて。しなずやあるとみたまへ。あまたの人の志をろかならざりしを。むなしくなしてしこそあれ。きのふ今日帝の宣はん事につかむ。人聞やさしといへば。翁こたへていはく。天下の事はとありともかゝりとも。御イ命のあやうさこそ大きなるさはりなれば。なをかうつかふまつるまじき事をまいりて申さむとて。まいりて申樣。仰ごとのかしこさに。かのわらはをまいらせむとてつかふまつれば。宮仕に出奉候はゞしぬべしと申。宮つこまろがてにうませたるこにてあらず。昔山にて見つけたる。かゝれば心操もよの人ににずぞ侍ると奏せさす。御門仰給はく。宮つこまろが家は山本ちかくなり。御狩行幸し給はんやうにて見てむやとのたまはす。宮つこまろが申樣。いとよき事也。何か心もなくて侍らむに。ふと御幸して御覽ぜられなんと奏すれば。御門俄に日を定て御狩に出給ひ