Page:Gunshoruiju17.djvu/246

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て。かぐや姬の家に入給ふて見給ふに光みちてけうらにてゐたる人あり。是ならんと思して。にげて入袖をとりてをさへ給へば。面をふたぎて候へど。始よく御覽じつれば。たぐひなくめでたくおぼえさせ給ひて。ゆるさじとすとて。ゐておはしまさむとするに。かぐや姬こたへてそうす。をのが身は。此國に生れて侍らばこそつかひ給はめ。いとゐておはしましがたくや侍らんとそうす。御門。などかさあらん。なをゐておはしまさむとて。御こしをよせ給ふに。此かぐや姬きとかげになりぬ。はかなく口惜とおぼして。げにたゞ人にあらざりけりとおぼして。さらば御ともにはゐていかじ。もとの御かたちとなり給ひね。それをみてだにかへりなんと仰らるれば。かぐや姬もとのかたちに成ぬ。御門猶めでたくおぼしめさるゝ事せきとめがたし。かくみせつる宮つこまろを悅給ふ。扨つかふまつる百官人にあるじいかめしうつかふまつる。御門かぐや姬をとゞめて歸りたまはむ事をあかずくちおしくおぼしけれど。魂をとゞめたる心ちしてなむかへらせ給ひける。御こしにたてまつりて後に。かぐや姬に。

 かへるさの御幸物うくおもほえて背てとまるかくや姬ゆへ

御返り事。

 むくらはふ下にもとしはへぬる身の何かは玉の臺をもイ見む

これを御門御覽じて。い[かイ]ゞ歸り給はむ空もなくおぼさる。御心は更に立かへるべくもおぼされざりけれど。去とて夜をあかし給ふべきにもあらねば。かへらせ給ひぬ。常につかふまつる人をみ給ふに。かぐや姬の傍によるべくだにあらざりけり。こと人よりもけうらなりとおぼしける人の。かれにおぼしあはすれば。人にもあらず。かぐや姬のみ御心にかゝり