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Page:Gunshoruiju17.djvu/232

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ばかりて。難波にみそかにもて出ぬ。船に乘てかへり來にけりととのにつげやりていといたくくるしがりたるさましてゐたまへり。むかへに人多く參りたり。玉のえだをばながびつに入て物おほひて持てまいる。いつか聞けむ。くらもちの御子は。うどんぐゑの花もちてのぼりたまへりとのゝしりけり。是をかぐや姬聞て我は此御子にまけぬべしと胸つぶれて思ひけり。かゝるほどに門をたゝきて。倉持の御子おはしたりとつぐ。旅の御姿ながらおはしましたりといへば。あひたてまつる。御子のたまはく。命をすてゝかの玉のえだもちて來りとて。かぐや姬に見せ奉り給へといへば。翁持て入たり。此玉のえだにふみぞつけたりける。

 徒に身はなしつとも玉のえをイたをらて更にかへらさらまし

是をも哀とも見てをるに竹とりの翁走入ていはく。此御子に申給ひし蓬萊の玉のえだを。ひとつの所あやしき所なく。あやまたずもておはしませり。何をもちて[かイ]とかく申べきにあらず。旅御姿ながら。我家へもよりたまはずしておはしましたり。はや此御子にあひつかうまつり給へといふに。物もいはでつらづえをイ付て。いみじくなげかしげに思ひたり。御子今何かと云べからずと云まゝに。緣にはひのぼり給ぬ。翁理と思ひ。此國にみえぬ玉の枝也。此度はいかでかいなび申さん。人樣もよき人におはすなど云ゐたり。かぐや姬の云やうイ无。親のたまふ事をひたぶるにいなび申さん事のいとをしさに。取がたき物をかくあさましくもてきたる事をねたくおもひ[侍るといへど。なほイ]。翁は閨の內しつらひなどす。翁御子に申やう。いかなる所にか此木は候けん。あやしくうるはしくめでたきものにもと申。御子こたへての給く。さをとゝしのきさらぎの十日頃に難波より船に乘て海の中