Page:Gunshoruiju17.djvu/229

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に歸りて。物を思ひ祈りをし願をたつ。思ひやむべくもあらず。さりとも終に男あはせざらんやはとおもひて賴をかけたり。あながちに心ざしをみえありく。是を見つけて。翁かぐや姬に云樣。我子のほとけへんげの人と申ながら。こゝらおほきさまでやしなひたてまつる志をろかならず。翁の申さん事を聞給ひてんやといへば。かぐや姬。何事をかのたまはむ事はイ承はらざらむ。變化の物にてはんべりけん身ともしらず。親とこそおもひ奉れといへば。翁。うれしくもの給ふ物かなと云。翁年七十にあまりぬ。今日ともあすともしらず。此世の人は。おとこは女に逢。女は男にあふ事をす。其後なむ門もひろくもなり侍る。いかでかさる事なくてはおはしまさむせんイ。かぐや姬のいはく。なむでうさる事かし侍らんと云ば。變化の人といふとも。女の身持給へり。翁のあらんかぎりは。かうてもいますかりなんかし。此人々の年月を經て。かうのみいましつゝのたまふ事をおもひ定て。獨々にあひ奉り給ひねといへば。かぐや姬いはく。よくもあらぬ形を。ふかき心もしらであだ心つきなば後くやしき事も有べきをと思ふばかり也。世の賢き人成とも。ふかき志をしらではあひがたしとなひ思ふと云。翁いはく。思ひのごとくもの給ふかな。そもそもいかやうなる志あらん人にはあはんとおぼす。かばかりの心ざしをろかならぬ人々にこそあめれ。かぐや姬のいはく。なにばかりのふかきをかみんといはむ。いさゝかの事也。人の心ざしひとしかんなり。いかでか中にをとりまさりはしらむ。五人のひとの中にゆかしき物みせ給へらんに御志まさりたりとてつかふまつらんと。そのおはすらん人々に申給へといふ。よき事なりとうけつ。日くるゝ程に例の