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Page:Gunshoruiju17.djvu/230

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あつまりぬ。あるひは笛を吹。或はうたをうたひ。或は琵琶しやうか唱歌をし。あるひはうそをイふきあふぎをならしなどするに。翁出ていはく。忝もきたなげなる所に年月を經てものし給ふ事。きはまりたるかしこまりと申す。翁の命今日明日ともしらぬを。かくの給ふ君達にも。よく思ひ定てつかふまつれと申も理なり。いづれもをとり增りおはしまさねば。御志の程はみゆべし。つかふまつらん事は。それになむ定むべきといへば。是よき事なり。人の御恨も有まじと云。五人の人々もよき事也といへば。翁入て云。かぐや姬。石作の御子には[天竺にイ]佛の御いしのはちと云物あり。それをとりて給へと云。倉もちの御子には。東の海に蓬萊と云山あり。それにしろがねを根として金をくきとし白き玉をみとし[てイ]たてる木あり。それを一えだおりて給はらんと云。今獨には。もろこしにある火鼠の革ぎぬをたまへ。大とも伴イの大納言には。龍のくびに五色に光る玉あり。それをとりて給へ。磯の上の中納言には。つばくらめのもたるこやすのかひ一イ无とりて給へといふ。翁。かたき事どもにこそあなれ。此國に有物にはあらず。かく難事をばいかに申さんといふ。かぐや姬。なにかかたからんといへば。翁。とまれかくまれ申さんとて出て。かくなむきこゆるやうに見たまへといへば。御子たち上だちめ聞て。おいらかにあたりよりだになありきそとやはのたまはぬといひて。うむじてみな歸ぬ。なを此女みでは。世にあるまじき心ちしければ。天竺にある物ももてこぬものかはと思ひめぐらして。いしづくりの御子は心のしたくある人にて。天竺に二つとなきはちを。百千萬里のほどいきたりともいかでかイとるべきと思ひて。かぐや姬のもとには。今日なん天竺へ石のはちと