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Page:Gunshoruiju17.djvu/144

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むかしおとこ。ありあひ一本がたかりける女に。物がたりなどするほどに。とりのなきければ。

 いかてかは一本鳥のなくらん人しれすおもふ心はまた夜深きに

むかしおとこ。つれなかりける女に。いひやりけり。

 行やらぬ夢路をたとる袂にはあまつそらなき露やをくらん

昔男。ふして思ひおきておもひあまりて。

 我袖は草の庵にあらねともくるれは露のやとりとそなる

昔。人しれぬ物おもひける男。つれなき女のもとに。

 戀わひぬ蜑のかるもに宿るてふ我かく一本身をもくたきつる哉

昔。心つきな[きイ]色ごのみなる男。なが岡といふ所に家つくりてをりけり。そこのとなりなりける宮ばらに。こともなき女どもありけり。ゐなかなりければ。田から[む]とて此男見をりけるに。いみじのすきものの。しわざやとてあつまりいりきけれはいりければ一本。此男おくににげいりにけき。女かく。

 あれにけりあはれ幾よの宿なれや住けん人のをとつれもせす

といひて。あつまりきければ。男。

 葎生て荒たる宿のうれたきはかりにもおき[鬼イ]のすたく也けり

といひてなむ出したりける。此女どもほひろはんといひければ。

 打わひて落穗拾ふときかませは我も田つらにゆかまし物を

昔男有けり。宮づかへもいそがしくて。心もまめならざりければ。家とうじ「と新」[イニナシ]まめに思はんといひける人につきて。人の國へいにけり。この男うさの使にていきけるに。ある國のしぞうの官人のめになんあると聞て。女あるじに。かはらけとらせよ。さらばのまんといひければ。かはらけとらせて。いだしたりけるに。さかななりけるたち花をとりて。

 さ月まつ花橘の香をかけは昔の人の袖のかそする

といへりけるにぞ。思ひ出てあまになりて。山