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Page:Gunshoruiju17.djvu/143

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たりけり。まどひきたるほどに。しにゝければ。家にこもりて。つれとながめて。

 暮かたき夏の日くらしなかむれはその事となく物そ悲しき

むかしおとこ。ねんごろにいかでと思ふ女ありけり。されどこの男あだなりときゝて。つれなさのまさりて。

 大幣のひくてあまたに閒ゆれは思へとえこそ賴まさりけれ

返し。

 大幣と名に社たてれ流れてもつゐによるせはあるてふ物を

むかしおとこ有けり。ものへ行人に。むまのはなむけせんとて。ひと日まちけるに。こざりければ。

 今そしる苦しき物と人またん里をはかれすとふへかりけり

昔男。いもうとのおかしげなるを見て。

 うらわかみねよげにみゆる若艸を人の結はぬことをしそ思ふ

ときこえければ。返し。

 初草のなとめつらしきことのはそうらなく物を思ひける哉

むかし男有けり。人をうらみて。

 鳥のこをとをつゝ十はかさぬとも思はぬ人を思ふものかは

 白露をけたて千とせはありぬともいかゝたのまん人の心を

といへりければ。をんな。

 朝露は消のこりても有ぬへし誰か此世をたのみはつへき

又おとこ。

 吹風にこそのさくらはちらすともあなたのみかた人の心や

又返し。女。

 行水にかすかくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり

又おとこ。

 行水とすくる齡とちる花といつれまててふことをきくらん

あだにて。たがひにしのびありきすることをいふなるべし。

むかしおとこ。人の前栽うへけるに。

 古今移し植はうへしうへは一本秋なき時やさかさらん花こそちらめねさへ枯めや}}

むかしおとこありけり。人のもとより。かざりちまきをこせたる返事に。

 葛蒲かり君は沼にそ惑ひける我は野に出てかくそをゝしき

とて。きじをなんやりける。