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Page:Gunshoruiju17.djvu/136

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返し。

 けふこすはあすは雪とそ降なまし消すは有と花とみましや

むかし。なま心ある女ありけり。男とかういひけり。女歌よむ人なりければ。こゝろみんとてむめを折てやる。

 紅にゝほふはいつら白雪の枝もたはゝにふるやとも見ゆ

おとこしらず。よみによみけり。

 紅にゝほふかうへのしら雪は折ける人の袖かとそ見る

昔男。みやづかへしける女[の方にイ]ごたちなりける人をあひしれりけり。ほどもなくかれにけり。おなじところなりければ。さすがに女のめには見ゆるものから。男はあるものにもおもひたらねば。をんな。

 天雲のよそにも人のなりゆくか流石にめには見ゆる物から

とよめりければ。おとこ。

 行かヘり空にのみしてふることは我いる山の風はやみなり

とよめるは。あまた男ある女になむありける。

昔おとこ。やまとにある女をよばひて。あひにけり。さてほどへて。宮づかへしける人なりければ。かへりけるみちに。やよひばかりに山にかえでのもみぢの。いとおもしろきをおりて。すみし女のもとにみちより。

 君かためたをれる枝は春なからかくこそ秋の紅葉しにけれ

とてやりたりければ。返事は京にいきつきてなん。もてきたりける。

 いつのまに移ろふ色のつきぬらん君か里には春なかるへし

昔男女。いとかしこう思ひかはして。ことごゝろなかりけるを。いかなることか有けむ。はかなきことにことづけて。よの中をうしと思ひて。いでていなんとて。かゝる歌なん物にかきつけゝり。

 出ていなは心かろしといひやせん世の有樣を人はしらすて

とよみて。をきて出ていにけり。この男かくかきをきたるをみて。心うかるべきこともおぼ