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Page:Bushido.pdf/97

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優にやさしきは我國武夫の習なりけり。

 武士をして暗たる兵革の世、慘たる修羅の巷にありて、尙ほ且つ慈悲と哀憐の情とを禁ずる能はざらしめたるもの、歐洲に在りては即ち基督敎なり。而して日本に在りては、實に詩歌と音樂との嗜好に俟てり。凡そ優雅の情感を切にするは、他の痛苦を察するの念を養ふ所以にして、人の感情を想ふによりて生ずる辭讓慇懃の心は、即ち『禮儀』の本を成すものなり。