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猶ほ唯だ其の黃なる聲の、黃色新聞に反響するを聞くに過ぎず。

 國家の權能も、社會の勢力も、共に其威を張つて、武士の敎訓に抗す。ヴエブレン氏の說けるが如く、旣に『實業を重んずる社會に於て、禮法の頽廢せる、換言せば、人生の鄙野に陷りたる事は、感覺銳敏なる諸人の眼底に映ずる、澆季文明の一大罪過なり』。形體又た組織の奈何を問はず、トラストなるものゝ存立を許容せざる平民主義の勝ち誇りたる潮勢は、之を抵迕すること能はず、而して彼の知識、敎育と名くる固定資本を獨占し、道義の品質に等級價格を定むるものの組織したる一個のトラストたる武士道に抗して、其力獨り能く之れが殘骸を覆沒せしむるに足れり。現時の社會