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在りては、シヴアリーの一旦封建制度の懷より離るゝや、基督敎の鞠育する所となりて、新生命の權利リースを得たるに反し、日本に在りては、之を養ふに足るべき大宗敎なきを以て、其生母たる封建制度の去りてより、武士道は怙恃を喪ひて孤兒となり、自立の止むを得ざるに至れり。現時の精巧なる軍隊組織は、或は之を取つて、庇護の下に置くを得べしと雖、奈何せん、近世の戰爭は、此れをして其發達を持續せしむべき餘地を有せず。其尙ほ幼なるの日、之を保育したる神道は旣に自から老いたり。支那古代の老聖賢は斥けられて、代ふるにベンザム及びミル一派の新進學徒あり。現時の國粹保存的傾向に阿諛し、從つて、今日の需用に迎合せる、適好なる倫理說の工夫發明せられたるあり。されど吾人は