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特有する不變の要質』に等しきものあり。ルボン氏は其近著『民族心理學』に於て、皮相淺膚なる速斷と、灼然たる槪括論とを以て、『知識上の發見は、人類共有の傳產なり。性格の特質缺點は、各人民特有の傳產にして、此等は堅巖の如し、數千百年の間、日夜淙々たる水流の之を洗うて纔に其粗面圭角を砥礪するを得るものなり』と曰ふもの、其語勁拔殊に稱すべし。然るに若し果して各個國民性格の特質缺點にして、殊別の傳產と稱すべきものあらんには、此說大に傾聽するに足るものあるべし。只だ惜むらくは、此種の杓子定規論たる、ルボンの未だ其著に筆を下すに及ばずして、夙にテオドル、ヴアイツ及びヒユー、ムレー等人類學者の論破して復た餘蘊なきものなることを。武士道の浸潤した