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 場內閴として死せるが如く、唯だ僅かに前なる死首より迸り出づる血の凄しき音のみ聞ゆ。此首の主こそ、今の今まで勇邁剛毅の人なりけるを。噫、懼しかりける事どもなりき。

 介錯は跪拜し、兼ねて用意したる白紙を取りて刄を拭ひつ、高座を下りぬ。血染の短刀は今日の仕置の證據として、嚴かに持ち去られたり。

 かくて御門みかどの役人二人は其座を離れて、外國檢使の前に來り、多紀善三郞の處刑滯無く相濟みたり、實見せられよと云ふ。儀式はこれにて終はりぬ。我等は寺院を去れり。

 我國の文學若くは實見者の物語よりして、切腹の狀景を