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Page:Bunmeigenryusosho1.djvu/134

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あるべからず、然らば、さかなをおきて何かはせんと思ひて、某ことく給はりぬと、ゆめに見侍ると云て、かの肴の入物をあけて見れば、いひしごとくに少も殘さず、其時二人のもの笑つて云、かのいそほの才覺は、くわんのうがこふ處にあらずと、いようやまひ侍る也、

第十七 いそほ諸國をめぐる事

さるほどに、いそほそれより諸國をめぐりありきにけり、ばびらうにやの國りくるすと云帝王、之をあひし給ふ事限りなし、國王のもてなし給ふ上は、百官卿相をはじめとして、あやしのものに至るまでも、是をもてなすこと限なし、其比ならひとして、よの國の帝王より、種々の不審をかけあはせ給ふに、もし其不審をひらかせ給はねば、其返報にほうろくを奉る、しかのみならず、不審開かせたまはぬ帝王をば、偏へに其臣下のごとし、然るによつて、諸國のふしんまちに、ばびらうにやの帝王へかけさせ給ふふしん、ひらかせ給はぬことなし、これひとへにいそほが才覺とぞ見えにける、またばびらうにやより、よの國へかけ給ふふしん、いそほがかけ給ふ不審なれば、一つもひらかせ給ふ帝王なし、かの返報として、あまたの財寶をとらせたまふ、其惠みによつて、いそほもめで度榮へけること限なし、才智はこれ朽せぬたからとぞ見ゆ、

第十八 いそほ養子をさだむる事

さるほどに、いそほいみじくさかへければ、年たけ齡をとろふるまで實子なし、去によつて、えうぬすと云侍を養ひて、わがあとをつがせんとす、あるときえうぬす大なる罪科有けり、心におもふ樣、此事いそほしるならば、たちまち國王へそうもんして、いかなる流罪にかおこなはれんとおもひ、せんずる所、只いそほをうしなはゞやとおもふこゝろ出來て、奉書をとゝのへ、我親いそほこそ、りくうるすの帝王に心をあはせ、すでにてきと罷成候とそうしけれども、帝王さらにしんじ給はず、かるがゆへに、えうぬす二度奉書を作りて叡覽にそなふ、みかど此よし御らん有て、扨は疑がふ所なし、急ちうせんとて、ゑりみほと云臣下に仰て、いそほを誅すべきよし綸言有、ゑりみほ勅諚の旨をうけたまはりて、いそほのたちへをしよせ、すなはちいそほをからめ取つて、すでに誅せんとしたりけ