ごとくし給へとをしへければ、あき人謹んで承る、其計略に云、一尺四寸の箱一つこしらへ、上をばうつくしく作りかざりて、中には石を多くいれて、汝が國の人に持せて、これを玉ぞといつはりて、かの長者のもとへあづけさせよ、其時にのぞんで、なんぢが金をこへ、玉を預らんがために、銀をば汝に返すべしと云、あき人これをこしらへて、いそほの敎しへのごとく、同國のものに持せ、かの長者の所へ行き、これをあづくる、その時あんのごとく、玉をあづからん爲に、あき人に云やう、いかなれば、御邊はかねをばとりたまはぬぞ、これこそおことの金ぞとて、本のかねをあたへてけり、そのゆへは、此箱の內の名珠、十貫目の南鐐より、そくばくまさるべしとおもふによつてなり、すなはち箱一つあづけて、かねをとりて歸りけり、あつぱれかしこきをしへかなとて、ほめぬ人こそなかりけり、
第十六 いそほ二人のさぶらひと夢物語の事
ある時、さんと云所に、侍二人いそほを誘引して、夏の暑さをしのがん爲、すゞしき所をもとめて至りぬ、其所につゐて、三人定めていはく、こゝによきさかな一種あり、むなしく喰はんもさすがなれば、暫くこの