Page:Bukyō shitisyo.pdf/72

提供:Wikisource
このページは検証済みです

曰く「奇の音は機、故に或は傳へて機につくる其義は則ち一なり。其辭を考ふるに曰く、四を正となし四を奇となし、餘地を握機となす、奇は餘零なり、此れに因つて音機、臣愚謂へらく、兵は是れ機ならずといふことなし、いづくんぞ握に在つて言はんや、さに餘奇と爲さば則ちなり。夫れ正兵は之れを君に受く、奇兵は將みづから出づる所。法に曰く、令もとより行はれて以て其民を敎ふる者は則ち民服すと、是れ之れを君に受くる者なり。又曰く兵豫め言はず君命受けざる所ありと。是れ將自から出づる所の者なり。凡そ將正にして奇なきは則ち守將なり、奇にして正なきは則ち鬪將なり、奇正皆得るは國の輔なり。是の故に握機、握奇、本と二法なし、學者にありて兼通するのみ。」

 太宗曰く「陣數九あり、中心零は大將之れを握る、四面八向皆準を取る、陣の間に陣を容れ、隊の間に隊を容る、前を以て後となし、後を以て前となす、進むにはやく奔ることなく、退くにあわて走ることなし、四頭八尾觸るゝところ頭となす、敵其中を衝かば兩頭皆救ふ。數五に起つて八に終る。此れ何の謂ぞや。」靖曰く、「諸葛亮石を以て縱橫布いて八行方陣の法をつくる、卽ち此圖なり。臣嘗て敎へるに必ず此陣を先にす、世の傳ふる所の握機の文、盖し其あらましを得たり。」太宗曰く、「天、地、風、雲、龍、虎、鳥、蛇、斯の八陣は何の義ぞ。」靖曰く「之れを傳ふる者誤