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ふ。

 凡そ民は仁を以て救ひ、義を以て戰ひ、智を以て決し、勇を以て鬪ひ、信を以て專らにし、利を以て勸め、功を以て勝つ。故にこゝろ仁にあたり、おこなひ義にあたる。物に堪ふるは智なり、大に堪ふるは勇なり、久に堪ふるは信なり。讓以て和し、人以てあまねく、自予以て循はず、賢を爭うて以て人を爲し、其心をよろこばし其力をいたす。凡そ戰は其微靜を擊ち其强靜を避く、其倦勞を擊ち其閑窕を避く、其大懼を擊ち其小懼を避くるは、古よりの政なり。


用衆第五

 凡そ戰の道、寡を用ひて固く衆を用ひて治む、寡はわづらはしきに利あり、衆はたゞしきに利あり、衆を用ひて進止し寡を用ひて進退す。衆以て寡に合ふときは則ち遠くつゝんで之れを闕く、若し分かつてたがひに擊たば寡以て衆を待て、若し衆之を疑はば則ちみづから之れを用ひよ。利を擅まゝにするときは則ち旗を釋て迎へて之れをかへせ、敵若しおほきときは則ち衆をうらを受けよ。敵若し寡く若し畏るゝときは則ち之れを避け之れを開け。凡そ戰は、風をうしろにし、高きを背にし、高きを右にし、險を左にし、沛を𡉏を歷、兼ね舍して環龜せよ。凡そ戰は、設けて其おこるを觀、敵を視て擧