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ぐ、待つときは則ちしたがつてつゞみうつこと勿れ、衆のおこるを待て、攻むるときは則ちたむろして之れを伺へ。

 凡そ戰は、衆寡以て其の變を觀、進退以て其のかたきを觀、危くして其の懼るゝを觀、靜にして其の怠るを觀、動いて其の疑を觀、襲うて其の治を觀る。其の疑を擊ち、其の卒に加へ、其屈を致し、其の規を襲ひ、其の避けざるに因り、其はかりごとへだて其の慮を奪ひ、其つかるるに乘ず。凡そ奔をふこと息むこと勿れ、敵人或は路に止まらば則ち之れを慮れ。凡そ敵の都に近ければ必ず進路あらん、退くに必ずかへるおもんぱかりあらん。凡そ戰は、先てば則ちつひえ後るれば則ちつたなし、やすめば則ち怠りやすまざるも亦つひゆ、息むこと久しきも亦た其のつたなきにかへる。書親絕つ、是れを顧の慮を絕つといふ。良を選び兵をついづる、是れを人の强をすといふ、じんを棄て食を節する、是れを人の意を開くといふ、古よりの政なり。


司馬法