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し、生をたつとぶときは疑多し、死をたつとぶときは勝たず。凡そ人は愛に死し、怒に死し、威に死し、義に死し、利に死す。凡そ戰の道、敎約なるときは人死を輕んず、道約なるときは人死にたゞし。凡そ戰は、勝にしたがひ、したがひ、天にしたがひ、人にしたがふ。凡そ戰は、三軍の戒は三日に過ぐるなし、一卒の警は分日に過ぐるなし、一人の禁は瞬息に過ぐるなし。凡そ大善は本を用ふ、其次は末を用ふ、略をり微を守り、本末唯だ權戰なり。凡そ三軍に勝つは一人勝つなり。凡そつゞみうつには、旗旌に鼓ち、車に鼓ち、馬に鼓ち、徒に鼓ち、兵に鼓ち、首に鼓ち、足に鼓ち、七たび鼓てかねとゝのふ。凡そ戰旣に固きはふたゝびすること勿れ、ふたゝび進むときはことくすること勿れ、凡そ盡くするときは危し。凡そ戰は陣の難きに非ず、人をして陣すべからしむる難し、人をして陣すべからしむる難きに非ず、人をして用ふべからしむる難し、之れを知ること難きに非ず、之れを行ふこと難し。人まさに性あり、性はくにごとに異なり、敎は俗をなす、俗はくにごとに異なり、道は俗を化す。凡そ衆寡勝つがごとく、しからざるが若くば、兵、利を吿げず、甲、堅きを吿げず、車、固きを吿げず、馬、良きを吿げず、衆みづから多しとせず、未だ道を獲たりとせず。凡そ戰勝てば則ち衆と善を分かち、若し復戰はんとせば則ち賞罰を重んず。若し勝たざらしめば、過を取ることおのれにあり。復戰はゞ則ち誓つて以て前にけ、先術を復すること勿れ、勝否反すること勿れ。之れを正則と謂