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いふ。密靜みつせいにして內力ないりよく多し、是れを固陣といふ。是れに因つて進退す、是れを多力といふ。かみ暇ありて人敎ふ、是れを煩陣といふ。しかく有するに職を以てす、是れを物に堪ふるといふ。是れに因つて物を辨ず、是れを簡治といふ。衆をはかり、地に因り、敵に因り、陣に令し、攻戰守り、進退止まり、前後ついであり、車徒ることあり、是れを戰參せんざんといふ。服せず、信せず、和せず、怠り、疑ひ、厭ひ、つたなさゝへ、柱まがり、わづらはしくほしいまゝに、くづゆるうす、是れを戰患せんくわんといふ。驕々けう懾々せつ吟曠ぎんくわう虞懼ぐく事悔じくわい、是れを毀折きせつといふ。大小、堅柔、參伍、衆寡。凡そふたつにする、是れを戰權といふ。凡そ戰遠きをへだてて近きを觀る、時に因り財に因り、信を貴び疑を惡む、兵をおこすに義あり、事をすに時あり、人を使ふに惠あり、敵を見るはしづかに、亂を見るは暇あり、危難を見て其衆をわするゝ無く、國に居ては惠むに信を以てし、ぐんにあつては廣むるに武を以てし、刄上たすにびんを以てす。國に居てはし、ぐんにあつては法あり、刄上には察す。國に居てよみせられ、軍にあつて方せられ、刄上信ぜらる。

 凡そ陣行はあらく、戰は惟だ密に、兵は惟だまじへ、人の敎は厚靜なれば乃ち治まりて威利あきらかなり、義を相守るときは則ち人勉む、慮多く成れば則ち人服す、れ中に服してついで治まり、物旣にあらはるゝときは目乃ち明かなり、慮旣に定まるときは心乃ち强く、進退疑なし、敵を