爲し、其利を見ては佯つて知らざる爲す、此の如き將は名づけて智將となす、與に戰ふ勿れ。若し其衆讙譁、旌旗煩亂、其卒自から行き自から止まり、其兵或は縱或は橫、其北ぐるを追ふこと及ばざるを恐れ、利を見て得ざるを恐る、此れを愚將と爲す、衆と雖も獲べし。」
武侯問うて曰く、「車堅く馬良く將勇に兵强きも、卒かに敵人に遇うて亂れて行を失ふときは則ち之れを如何。」起對へて曰く、「凡そ戰の法、晝は旌旗旛麾を以て節と爲し、夜は金鼓笳笛を以て節となす、左を麾けば左し、右を麾けば右す、之を鼓うてば則ち進み、之を金うてば則ち止まり、一たび吹いて行き、再び吹いて聚まる、令に從はざる者は誅す、三軍威に服す。士卒命を用ふれば則ち戰に强敵なく攻むるに堅陣なし。」
武侯問うて曰く、「若し敵衆く我寡くば之れを爲す奈何。」起對へて曰く、「之を易きに避け之を阨に邀ふ。故に曰く一を以て十を擊つは阨より善きはなし、十を以て百を擊つは險より善きはなし、千を以て萬を擊つは阻より善きはなし。今少卒あり、卒かに起つて金を擊ち鼓を鳴らし阨路に於てせば、大衆ありと雖も驚き動かざるなし。故に曰く衆を用ふる者は易に務む、少を用ふる