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天寵は大谷の口、龍頭は大山の端、必ず靑龍を左にし、白虎を右にし、朱雀を前にし、玄武を後にし、招搖上にあり、事に下に從ふ。將に戰はんとするの時審かに風のよつて來る所をうかゞひ、風順ならば致し呼んで之れに從へ、風逆ならば陣を堅くして以て之れを待て。」

 武侯問うて曰く、「凡そ卒騎をやしなふに豈に方有りや。」起對へて曰く、「夫れ馬は必ずそのる所を安んじ、其水草を適にし、其飢飽を節し、冬は則ち厩を溫にし、夏は則ちのきを凉しくし、毛鬣を刻みり、謹んで四下を落し、其耳目ををさめて驚駭せしむる無く、其馳逐を習はし、其進止をならはし、人馬相親み、然る後ち使ふべし。車騎の具は、鞍勒銜轡必ず完く堅からしめよ。凡そ馬は末にやぶれず必らず始めに傷る、飢に傷れずして必らず飽に傷る。日暮れ道遠きは必ず數〻しば上下せん、寧ろ人を勞するも愼んで馬を勞する勿れ。常に餘あらしめて敵の我を覆ふに備へよ。能く此れに明かなる者は天下に橫行す。」


論將第四

 吳子曰く、「夫れ文武を總ぶるは軍の將なり、剛柔を兼ぬるは兵の事なり、凡そ人將を論ずること常に勇に觀る、勇の將に於ける乃ち數分の一のみ。夫れ勇者は必ず輕〻しく合ふ、輕〻しく合