遷つて氷を剖り水を濟り、艱難を憚からず。二に曰く、盛夏炎熱、晏く興き間なく行き驅り、飢渴遠きに取るを務む。三に曰く、師旣に淹久、糧食有るなし、百姓怨怒、妖祥數〻起り、上止むる能はず。四に曰く軍資旣に竭き、薪芻旣に寡く、天陰雨多く、掠めんと欲するも所無し。五に曰く、徒衆多からず、水地利あらず、人馬疾疫、四隣至らず。六に曰く、道遠く日暮れ、士衆勞かれ懼れ、倦んで未だ食せず、甲を解きて息む。七に曰く、將薄く吏輕く、士卒固からず、三軍數〻驚き、師徒助け無し。八に曰く、陣未だ定まらず、舍して未だ畢はらず、阪を行き險を涉り、半ば隱れ半ば出づ。諸〻此の如きは之を擊つて疑ふこと勿れ。占はずして之れを避くる者六つあり、一に曰く、土地廣大、人民富みて衆し、二に曰く、上其下を愛し、惠施流布す。三に曰く、賞信あり刑察かに、發して必ず時を得。四に曰く、功を陣し列に居き、賢に任じ能を使ふ。五に曰く、師徒の衆、兵甲の精。六に曰く、四隣の助、大國の援、凡そ此れ敵人に如かざれば、之れを避けて疑ふこと勿れ。所謂可を見て進み、難を知つて退くなり。」
武侯問うて曰く、「吾れ敵の外を觀て以て其內を知り、其進むを察して以て其止まるを知り、以て勝負を定めんと欲す、得て聞くべきか。」起對へて曰く、「敵人の來るや蕩々慮り無く、旌旗煩亂、人馬數〻顧みれば、一以て十を擊つべし、必ず措くこと無からしめよ。諸侯未だ會せず、君