吳子儒服して兵機を以て魏の文侯に見ゆ。文侯曰く、「寡人軍旅の事を好まず」と。起曰く、「臣見を以て隱を占ひ、往を以て來を察す、主君何ぞ言心と違へる。今、君四時皮革を斬離し、掩ふに朱漆を以てし、畫くに丹靑を以てし、爍かすに犀象を以てせしむ。冬日之れを衣れば則ち溫かならず、夏日之れを衣れば則ち凉しからず。長戟二丈四尺、短戟一丈二尺、革車、奄戶、縵輪、籠穀を爲る、之れを目に觀れば則ち麗かならず、之れに乘つて田せば則ち輕からず、識らず主君安んぞ此れを用ふる。若し以て備へ、進み戰ひ退き守つて能く用ふる者を求めずば、譬へば伏雞の狸を搏ち乳犬の虎を犯すが如し、鬪心ありと雖も之れに隨つて死なん。昔、承桑氏の君、德を修め武を廢して以て其の國家を滅せり、有扈氏の君、衆を恃み勇を好み以て其の社禝を喪へり。明主は玆れを鑒み、必ず內文德を修め外武備を治む、故に敵に當つて進まざるは義に逮ぶことなし、屍を僵して之れを哀しむは仁に逮ぶことなし。」